最近担当した案件です。

明治31年に明治民法が施行され、法令で相続人が誰になるかが明文化されました。家督相続がよく知られています。

では、この明治31年よりも前に亡くなった方の相続人を特定する必要がある場合はどうしたら良いでしょうか?

今回、この明治31年よりも前に亡くなった方(戸主ではない方です。以下「被相続人」といいます)が、不動産登記簿上の所有者となっている案件を担当しました。この方の相続人を特定する必要があるわけです。

明文の法令はないので慣習・慣例により被相続人の方の相続人を特定することになるのですが、この場合、施行されずに廃止された明治23年民法が、当時の慣例に基づいて制定されたと言われているため、今回、この明治23年民法をもとに相続人を特定する方法をとりました。この場合の戸主ではない方が亡くなったときの相続人を「遺産相続人」と呼ぶそうです。家督相続との対比をすると以下のとおりです。

遺産相続:戸主ではない方がなくなったときの相続

家督相続:戸主がなくなったときの相続

明治31年よりも前の遺産相続のルールは、一般に以下のとおりとのことです。

明治31年7月15日よりも前に、戸主ではない方が亡くなった場合の遺産相続のルール

1.遺産相続人は単独相続である。

   (相続人は1人であり、現代のように複数人が相続人なることはない) 

2.遺産相続人の順位は以下のとおりである。

  第1順位 直系卑属(被相続人からみて子・孫)

  第2順位 配偶者

  第3順位 戸主

今回、亡くなられた方は、子どもがおらず配偶者もいなかったため、被相続人が亡くなった当時の戸主の方が単独で相続すると判断し、法務局にその旨提出し、認められました。

司法書士といえども知らないことばかりですが、知らない問題に関しては、書籍を調べ、問題ないか検討しながらご依頼いただいた登記業務にあたっています。

なお、事例によって適用される法令は変わります。特に明治31年よりも前ですと明文の法令がないので、慣習により事例によって異なります。そのため、この記事のみでご判断せず、司法書士等の専門家にご相談ください。

参考

今回の事例は戸主ではない方の相続(遺産相続)でしたが、明治31年よりも前に戸主が亡くなった場合は、家督相続となり、その相続人は「家督相続人」と呼ばれます。

参考までに、明治民法施行前の家督相続の場合のルールを掲載します。

明治31年7月15日よりも前に、戸主が亡くなった場合の家督相続のルール

第1順位 法定家督相続人

直系卑属

第2順位 指定家督相続人

第3順位 血族選定家督相続人

原則として、被相続人の父が、家族のうち、次の順序で家督相続人を選定※

                                第1 兄弟

                                第2 姉妹

                                第3 兄弟姉妹の直系卑属のうち新等の最も近い男子

                                    なお、男子がいない(放棄した)ときは女子

※家族内の慣習に従うので注意を要します。

第4順位 尊属家督相続人

第5順位 配偶者

第6順位 他人選定家督相続人

以上