当事務所では、不動産について、亡くなった方名義から相続人の方名義に変更するご依頼をよくお受けしています。
不動産の「所有権」については、相続人の間で遺産分割協議さえまとまれば、署名押印で手続きは終了します。
たまに困るのは、相続対象の不動産の一部について、大昔(例えば昭和初期)に登記された(金融機関ではなく)個人の方を名義人とする仮差押の登記であったり、抵当権の登記が入っているときです。
困る理由は、昭和初期に生きていた個人の方が、自らを権利者として、対象不動産について仮差押したり、抵当権を登記しているわけですので、この個人の方は既に亡くなっているからです。
つまり、所有者にも相続が発生し、仮差押債権者・抵当権者にも相続が発生しているわけです。
そうなると、どちらの側も当時の状況を全く知らないですし、昔の貨幣価値ですので債権額が数百円で登記されているケースが散見されますので、所有権を相続された方は、これを費用をかけて抹消する必要があるのか、迷われる方も多いです。しかし、仮差押、抵当権の登記が入った土地は通常売却できませんので、子ども達のために、これらの抹消登記を依頼される方が多いです。
対応としては、不動産の所有者だけでなく、仮差押債権者、抵当権者の相続人を調査して、その相続人に対して、訴訟をして、抹消の判決をとって、その判決をもって仮差押、抵当権の抹消をする、ということになります。
大昔のことですので、何回も相続が発生している場合があり、通常仮差押、抵当権の相続登記はなされませんので、その相続が発生した回数分新たな相続人が増えていきます。
今回当事務所でご依頼いただいたのは、仮差押債権者の相続人が20人以上発生した案件でした。
当事務所で、相続人の調査から初めて、当時の民事訴訟法(明治民法を読み込み、裁判所と対応を協議しました)を調べて、無事に判決をとることができました。最速で対応しましたが、裁判所もあまりに昔すぎて手掛けたことのない案件だったようで裁判所内でも調査、検討いただいた案件で、1年程度かかった案件でした。
無事に解決して何よりでした。