近年、民事信託(家族信託)という手法が一般の方にも徐々に浸透し、特に都市部では多くの方が利用されているようです。たしかに、民事信託(家族信託)でなければ実現できない財産権の移転順序の指定や柔軟な財産管理を行うことができることから、一部の方にとっては非常に有益な手法となります。

しかし、その信託行為の内容によっては、受託者が非常に難しい財産管理を強いられることもあり、それを一般の方(家族の方)が完璧に理解をしながら運用していくことは容易ではありません。

そのため、民事信託(家族信託)という手法を採用するか否かは、慎重な検討を要します。とりわけ、委託者(及びその家族)が実現したいことを、遺言や任意後見契約等の他の平易でわかりやすい手法により実現できないかを事前に検討することが重要です。

当事務所にも民事信託(家族信託)の相談がありますが、実際に民事信託(家族信託)をされる方は極めて少数です。相談者に目的を聞くと、その目的を達成するためにわざわざ民事信託(家族信託)を行う必要がなく、別の手法で代用できることが多くあります。民事信託(家族信託)の組成にかかる専門家報酬及び費用は一般的に高額となりますから、別の手法の方が依頼者にとって費用の負担が少なくなるケースが多く、この点も重要な検討事項となります。

民事信託(家族信託)をご検討の方は、民事信託(家族信託)は当然ながら、他の手法(遺言、法定後見、任意後見契約など)にも詳しい専門家にご相談されることをお勧めします。